「None of Your Business」(ナン・オブ・ユア・ビジネス)とは?──「余計なお世話」をめぐる文化と心の距離感

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アメリカで暮らしていると、時折、バッサリと会話を切るようなフレーズに出会います。

その代表が “None of your business.”

日本語にすると「余計なお世話」や「あなたには関係ない」といった訳が当てはまりますが、実際にこれを使う、言われる場面には、日本人には少し刺激が強すぎると感じることも。

今回は、この言葉の意味と背景、そして日米の文化的な違いを掘り下げてみましょう。

“None of your business” の意味と語源

None of your business.は、「それはあなたの関わることではない」という意味の定型表現です。「それは私の個人的な問題であって、あなたに干渉する権利はない」という拒絶の意思をはっきりと伝えます。

語源としての「business」は、もともと “concern(関心ごと・関係)” や “matter(事柄)” を意味する中世英語の流れをくみ、「仕事」や「ビジネス」だけでなく、「個人的な事柄」、「他人に言うべきではないプライベートな問題」という意味合いも含んでいます。

つまり None of your business. は直訳すると「それはあなたの事柄ではない」、転じて「口を出さないで」となるのです。

🔗参照:

例文で覚えよう

✅ 例文1

A: “Why are you still single?”
B: “That’s none of your business.”
(訳)なんでまだ独身なの?──それはあなたには関係ないわ。

✅ 例文2

A: “How much money do you make?”
B: “Excuse me? That’s none of your business.”
(訳)いくら稼いでるの?──失礼だけど、それはあなたの知ることじゃないよ。

✅ 例文3

A: “I saw you were arguing with your boss. What happened?”
B: “I’d rather not talk about it. It’s none of your business.”
(訳)上司と口論しているところを見たけど。どうしたの?──話したくないな、それは君には関係ないことだ。

日本人にとっての none of your business の難しさ

このフレーズは英語としては明確で便利ですが、日本人にとっては心理的ハードルが非常に高い表現です。「相手の顔を立てる」「あいまいにやり過ごす」ことが美徳とされる日本文化では、ここまでハッキリと拒絶の意思を示すことに、どうしても抵抗を感じてしまいます。

特に家族や親しい間柄での距離が近い日本では、「それって余計なお世話じゃない?」と口に出すことが、人間関係の亀裂を招くリスクになりかねません。一方で、欧米では個人主義が根づいており、プライベートとパブリックの線引きが明確にされています。そのため、こうした表現も日常的に受け入れられやすいのです。

実際にアメリカで暮らしていると、「あ、これは none of your business って言わないと通じないな」と感じる場面が多々あります。たとえば個人的な話題に「ちょっと…」と濁しても、相手は質問を止めてくれない。「察する」 という文化がないため、遠回しな拒否は伝わらず、はっきりと言わなければ通じません

もちろん、最初はこの表現を使うことに躊躇します。「強すぎないか」「嫌われないか」と不安になるからです。でも、それを我慢して曖昧に答え続けると、どんどん踏み込まれてしまうこともあるのです。

そんなときにこのフレーズを使うと、「あ、これは聞いてはいけないことなんだ」と相手に伝わり、それ以上立ち入られずに済みます。つまり、自分の心を守るための“境界線”を引く道具として、この表現が役立つこともあるのです。

アメリカ人にとっても「強い」表現?

とはいえ、アメリカ人にとっても none of your business は少々強い表現だと感じられることがあります。カジュアルな会話の中では、ストレートすぎて「rude(失礼)」と思われることもあります。

そのため、代わりに次のようなやや穏やかな言い方を使う人もいます:

  • “I’d rather not say.”(訳)言いたくないな。
  • “That’s kind of personal.”(訳)ちょっと個人的なことなので。
  • “I don’t really want to get into that.”(訳)その話には入りたくないな。

特に職場や初対面の相手との会話では、none of your business は相手を突き放すような印象を与えるため、トーンや文脈に注意が必要です。一方で、あえて強めに言うことで「これ以上踏み込まないで」という明確な意思表示ができるという利点もあり、使い方は場面に応じて選ぶべき言葉といえるでしょう。

どちらも使い方を間違えると相手を傷つけたり、関係にヒビが入る可能性もあるため、文脈・相手との距離感を見極めたうえで使い分けることが大切です。

まとめ

None of your business はただの「余計なお世話」以上に、文化的背景や個人の境界意識の違いを映し出す表現です。日本人にとっては使うにも言われるにも勇気が要るフレーズですが、欧米の個人主義的な価値観の中では、自己防衛として自然に使われる言葉です。

また、アメリカ人でさえ場面によっては「強い」と感じる表現でもあり、代替表現と合わせて、その使い方を知っておくことで、より円滑で尊重あるコミュニケーションが可能になります。

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