英語を学んでいると、会話やメールでよく出てくるフレーズに 「keep an eye on」 があります。直訳すると「目を置いておく」ですが、実際には「注意する」「見守る」という意味で使われます。
短くて使いやすい一方で、英語らしい比喩が込められた表現です。今回はその意味、語源、そしてビジネス現場でのリアルな使われ方を掘り下げて紹介します。
直訳するとどうなる?
まず 「keep an eye on」 をそのまま訳してみると、「目を何かの上に留めておく」 になります。もちろん実際に目を置くわけではなく、「注意力」や「意識」を象徴的に指す eye を対象に向けることで、「気にかける」「注視する」という意味合いになります。
本来の意味とニュアンス
この表現の持つニュアンスは主に次のような場面で使われます。
- 安全を見守る
- 荷物など、大事なものを一時的に預かる感覚。
- 「ちょっと見ててもらえる?」という軽い依頼にも使える。
- 進捗や状況を確認する
- プロジェクトやタスク、スケジュール、数値を管理する文脈で頻出。
- 「定期的にチェックしてね」というニュアンス。
- 問題が起きないように気を配る
- 機械の稼働や市場の動向など、変化を見逃さないために注視する場面。
日本語にすると強い「監視」ではなく、「気にかける」や「目を離さないようにする」という柔らかさを持った表現です。「任せきりではないけれど、ちょっと注意しておく」という微妙なニュアンスを伝える際に使えるので便利です。
語源と歴史
「keep an eye on」 の歴史は古く、 16世紀末にはすでに使われていた記録があります。
古来より「目=eye」は「注意」「意識」の象徴でした。たとえば 「the public eye」(世間の目)、「the eye of the law」(法の目)のように、目は単なる器官ではなく「社会的な視線」や「監督の力」を表す比喩として機能してきました。
そこから 「keep an eye on」 も「視線を置き続ける→注意を払う」という意味に広がっていったのです。つまり単なる物理的な動作ではなく、心理的な集中や気配りを示す表現として定着しました。
なぜ eye は単数形?
ここで気になるのが、なぜ 「eye」 が単数形なのか、という点です。
前回紹介した 「heads-up」 の「head」は複数形でしたが、この表現では eye は一つ。これは 「片目でも十分に注意を払える」 という比喩的な感覚に由来すると考えられています。
英語には 「a keen eye」(鋭い観察力)、「an eye for detail」(細部に気づく力)のように、単数の eye を象徴的に使う表現が多くあります。両目の eyes にすると「じっと監視する」「にらみつける」ような強いニュアンスになってしまうため、日常的に使うには単数形のほうが自然だったのでしょう。
例文でチェック
ここで実際の使い方を見てみましょう。
- Can you keep an eye on my bag while I go to the restroom?
(トイレに行っている間、私のバッグを見ててもらえる?) - The manager asked me to keep an eye on the budget.
(マネージャーから、予算を注意して管理するように言われた。)
シンプルですが、どちらも「強く監視する」ではなく「気にかける・見守る」という柔らかい意味で使われています。
ビジネスや職場での実際
実際の職場では、対象が文脈で明らかなとき 「keep an eye on it.」 という形で使われることが非常に多いです。
- サーバーやシステムにトラブルがないか確認するとき:
“Can you keep an eye on it this afternoon?”
(午後はそれを見ててもらえる?) - プロジェクトの進捗や数値をチェックするよう依頼するとき:
Let’s keep an eye on it until next week.
(来週まで注意して見ていきましょう。) - 上司が部下に軽く頼むとき:
Keep an eye on it, just in case.
(念のため注意しておいて。)
ここでの 「it」 はサーバーだったり、資料だったり、進行中の案件だったり、その場の文脈で指している対象が自然に決まります。特定の名詞を毎回繰り返すよりも、「keep an eye on it」 の一言で済ませるほうが会話としてスマートだからです。
こうした場面で 「monitor」(監視する) や 「supervise」(監督する)を使うと強すぎてしまいますが、「keep an eye on」 なら柔らかく、協力をお願いするトーンになります。
つまりビジネス現場においては、「気にかけて注意しておいてね」という軽やかさが評価され、上司・同僚・部下いずれの関係でも自然に使える表現なのです。
まとめ
- 意味:注意する、見守る、気にかける
- 語源:16世紀にすでに使われており、「目=注意」の比喩から発展
- eye が単数形の理由:片目で十分に注意できるという象徴的表現
- 実際の使い方:ビジネスでは 「keep an eye on it.」 が最も多く、軽い依頼や確認に便利
シンプルながらも汎用性の高い表現。特にビジネスの現場では「任せる」ほど強くなく「放っておく」ほど弱くもない、ちょうど良い距離感での依頼や確認にピッタリです。ぜひ実際の会話やメールに取り入れてみてください。

