アメリカ全土で「No Kings Day(王はいらない日)」開催へーーその背景と意味とは?

時事

明日、2025年6月14日。アメリカにとって、この日はいくつかの意味で象徴的な一日となりそうです。

この日、ワシントンDCを除く全米約2000か所で予定されているのが、「No Kings Day(ノー・キングス・デー)」と呼ばれる大規模な抗議集会。そして同日は、アメリカ国旗の制定を記念する「フラッグ・デー」、アメリカ陸軍創設250周年、さらにドナルド・トランプ大統領の79歳の誕生日でもあります。

これらの出来事が重なる中で行われる「No Kings Day」は、単なる政権批判ではなく、アメリカの根本的な価値観と向き合うものとして注目されています。

「No Kings(王はいらない)」とは何か?

「No Kings」という言葉は、今日の政治的分断だけを示すものではありません。それは、アメリカの建国の原点に立ち返るものです。

1776年、アメリカはイギリスの王政から独立し、「すべての人間は生まれながらにして自由で平等である」と高らかに宣言しました。王の支配を拒否し、人民による統治を目指したこの精神は、アメリカ民主主義の根幹を成しています。

このスローガンが再び広く使われるようになったのは、2025年2月、ホワイトハウスの公式SNSに投稿された一枚の画像がきっかけでした。そこには、王冠をかぶったトランプ大統領とともに、「王よ、永らえよ(Long Live the King)」という文言が添えられていたのです。

この投稿を目にした多くの市民が「ただの冗談では済まされない」と感じました。政治的立場を問わず、「アメリカに王は要らない」「権力の集中は許してはならない」という声が全米に広がり、それが「No Kings Day」という抗議運動へと結実しました。

なぜ6月14日なのか? ― フラッグ・デーと軍事パレード

6月14日が抗議行動の舞台に選ばれたのは、偶然ではありません。この日は、アメリカ国旗の制定を祝う「フラッグ・デー」であり、アメリカ陸軍創設250周年という節目の年でもあります。

トランプ政権はこの記念日に合わせて、首都ワシントンD.C.で大規模な軍事パレードを実施する予定です。最大で4,500万ドル(約64億8,821万円※)の予算が投じられるとされ、この巨額の出費には、「退役軍人支援や教育にもっと予算を回すべきだ」という批判の声も上がっています。

※1ドル=144.18円で換算

さらに、戦車などの重量車両による道路インフラ損傷の懸念から、首都ワシントンD.C.や各地の自治体が「協力しない」との声明を出す事態ともなっています。

そして、偶然とは思えないタイミングでこの日はトランプ大統領の誕生日でもあります。国家的な祝賀ムードと重なるこの状況に対し、「まるで王の生誕を祝う儀式のようだ」と違和感を覚える市民も多く、それが「No Kings」というメッセージをさらに強くしているのです。

抗議が認められる理由 ― 憲法修正第1条(First Amendment)

このような大規模な抗議が、正当な権利として認められている背景には、アメリカ合衆国憲法修正第1条(First Amendment)の存在があります。

Congress shall make no law respecting an establishment of religion, or prohibiting the free exercise thereof; or abridging the freedom of speech, or of the press; or the right of the people peaceably to assemble, and to petition the Government for a redress of grievances.

引用元:U.S. Constitution, First Amendment — constitution.congress.gov

この条文は、信教の自由・言論の自由・報道の自由・平和的な集会の権利・政府への請願権を、国家権力から守るために定められたものです。

つまり、政府への批判であっても、非暴力的であれば抗議の自由が保障されているのです。これは、アメリカ民主主義の根幹であり、「No Kings Day」はその生きた証でもあります。

日本人旅行者・在住者の方へ:抗議集会に関する注意喚起

在ロサンゼルス日本国総領事館は、明日の抗議集会に関連し、日本人旅行者および在住者に以下の注意を呼びかけています。

抗議活動は平和的に行われると予想されますが、大規模な人の集まりは突発的な混乱や衝突に発展する可能性があります。人が多く集まる場所には近づかず、最新の情報に注意してください。
在ロサンゼルス日本国総領事館PDFより)

また、当日は一部地域で交通規制や公共交通機関の遅延も予想されています。外出の際は、現地当局の情報に十分注意し、安全なルートを確保してください。

最後に

「No Kings Day」は、単なる政権批判のイベントではありません。これは、アメリカという国が250年にわたり守ってきた「王政の否定」と「市民による統治」の理念に立ち返る機会です。

街頭の様子や報道の中に、アメリカの歴史と今が交錯する瞬間を感じるかもしれません。
ただし、抗議行動には予測不能なリスクも伴います。歴史的背景と現代の情勢を正しく理解しながら、自分自身の安全にも気を配りましょう。

引用元:What to know about Trump’s Army anniversary parade on June 14Democrats slam military parade as Trump’s multimillion-dollar ‘birthday party’Army parade tanks will be a 70-ton test for D.C. streets

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