前回は「ジョン・ハンコック」についてご紹介しましたが、同じ「ジョン」つながりで、今回は「ジョン・ドウ」について。
「ジョン・ドウ」の意味
ジョン・ドウ(John Doe)は英語圏で広く使われる仮名で、特に身元不明の男性や名前を伏せたい人物、一般市民の代表として使われます。日本語では「山田太郎」や「名無しの権兵衛」に相当します。ちなみに女性の場合は「ジェーン・ドウ(Jane Doe)」と呼ばれます。
語源と歴史
語源は14世紀のイギリスに遡ります。当時の法廷では、土地の所有権をめぐる訴訟の手続き上、実在しない原告や被告を設定する必要がありました。その際に、原告役として「John Doe」、被告役には「Richard Roe(リチャード・ロウ)」という仮名が使われるようになったのです。「Doe」は雌鹿を、「Roe」はノロジカ(ヨーロッパやアジアに生息する小型の鹿)を意味し、いずれも狩猟用語に由来しています。こうした仮名の習慣は長年使われ続け、後にアメリカの裁判制度にも受け継がれていきました。
現代のアメリカでは、警察や病院で身元不明の遺体を一時的に記録する際や、裁判で名前を伏せたい人物を表すときに「John Doe」という仮名が使われます。また、報道や政治の文脈では、「average John Doe(平均的なジョン・ドウ)」という表現で、特定の誰でもない一般人を意味することもあります。
※出典:John Doe
例文
- A John Doe was admitted to the hospital last night.
→ 昨夜、身元不明の男性が病院に運ばれた。
- This policy affects every John Doe in the country.
→ この政策は国内すべての一般市民に影響を与える。
まとめ
このように、「ジョン・ドウ」は法律用語から日常表現まで広がり、匿名性や一般性を象徴する言葉として、英語圏の文化に深く根付いています。
名前のない人を象徴しつつ、時に「誰にでも起こりうること」を代弁する存在でもあるジョン・ドウ。英語圏の文化や法制度を理解するうえで、興味深い存在といえるでしょう。